
不妊治療は何歳までできるの?

不妊治療を始めるのが遅くても、成功率を上げる方法はある?
不妊治療を始めるにあたって、年齢に関する疑問をお持ちではありませんか?
メディアでは高齢で出産する著名人や、不妊治療に関する体験談が頻繁に取り上げられ、多くの人が「高齢でも不妊治療によって子どもを持つことができる」と希望を持っています。
しかし、実際には女性の年齢が妊娠能力に大きく影響し、年齢が高くなるにつれて不妊治療の成功率も低下するのが現実です。
では、妊娠を望む場合、不妊治療はいつまでに始めるべきなのでしょうか?この記事では、不妊治療と年齢の関係、年齢が妊娠に及ぼす影響について紹介します。
高齢でも子どもが欲しいと思っている方や、不妊治療を開始するタイミングに迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
- 不妊治療と年齢の関係
- 年齢が妊娠に及ぼす影響
- 保険適応対象の年齢
- 高齢でも妊娠成功率を上げる方法
この記事の監修者
不妊治療の成功率は年齢によって異なる
年齢が上がるにつれて、不妊治療の成功の見込みは減少します。
具体的には、40代になると自然に妊娠する確率が1周期あたり約1〜5%に低下します。
さらに、妊娠の可能性の低下だけでなく、妊娠による母体と胎児の健康リスクが高まるのも注意しましょう。
ここでは、妊娠確率と年齢の関係について詳しく解説します。
妊娠適齢期とは?
妊娠適齢期とは、女性が出産に最も適した時期です。
年齢と共に、女性の生殖機能は自然と衰えていくため、妊娠適齢期は自然に限られたものになります。
具体的には、20代後半から30代初頭が、妊娠の可能性が最も高いです。
この時期には、女性の身体が妊娠に最適な状態にあり、妊娠確率がピークに達します。
しかし、35歳を過ぎると妊娠の確率は低下し、流産や染色体異常のリスクが増加するため、注意が必要です。
年齢別自然妊娠の確立
性交渉による自然妊娠の確率は、以下のようにまとめられます。
年齢 | 1周期あたりの妊娠率 | 1年間あたりの妊娠率 |
---|---|---|
20代 | 約25〜30% | 約78〜86% |
30〜34歳 | 約25〜30% | 約63% |
35〜39歳 | 約18% | 約52% |
40〜44歳 | 約5% | 約36% |
45歳以上 | 約1% | 約5% |
参照:M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition
このことから、年齢が上がるにつれて自然妊娠の確率が低下することは明らかです。
特に35歳を超える妊娠はより困難になることが予想されます。
不妊治療の妊娠確立
以下の表は、不妊治療を受けた場合の年齢別妊娠率を示しています。
年齢 | 不妊治療を行った場合の妊娠率 |
---|---|
25〜29歳 | 約20% |
30〜34歳 | 約18% |
35〜39歳 | 約13% |
40〜44歳 | 約4% |
45歳 | 約0.6% |
上記の表から、年齢が上がるにつれて、不妊治療を通じての妊娠の可能性が減少することがわかります。
特に40代に入ると妊娠率は顕著に低下するため、不妊治療を受ける際には開始時期に注意しましょう。
不妊治療を開始すべき年齢は?
妊娠の望みは夫婦ごとに異なりますが、生物学的な妊娠適齢期は共通しています。
そのため、将来子どもを望む場合は早期からの準備が大切です。
希望している子どもの数と不妊治療を開始するべきタイミングは、以下のとおりです。
欲しい子どもの数 | ||
---|---|---|
子供が生まれる確率 | 1人 | 2人 |
50% | 42歳 | 39歳 |
75% | 39歳 | 35歳 |
90% | 36歳 | 31歳 |
参照:Habbeman et al. Hum Reprod. 30;2215-21 2015
子どもの数が多いほど、より早い開始が求められます。
子どものことをまだ考えていない場合でも、早期の検査を受けておきましょう。
年齢によって妊娠率が異なる5つの理由
年齢が上がるにつれて妊娠確率が低下する理由として、以下の5つが挙げられます。
- 女性ホルモンが減少する
- 卵巣予備能が低下する
- 既存症リスクが増加する
- 卵子が老化する
- 精子の質が低下する
それぞれの理由を詳しく確認してみましょう。
女性ホルモンが減少する
女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンは、卵巣の働きや子宮の状態を整え、妊娠に至る過程を支えます。
年齢が上がるにつれてこれらの女性ホルモンの分泌は減少し、結果として卵巣の機能が弱まります。
利用可能な卵子の数量の減少や、子宮内膜が薄くなり受精卵の着床が難しくなることを意味しており、妊娠の確率を下げる原因です。
更年期と共に、これらの現象はさらに顕著になり、自然な妊娠が困難になります。
卵巣予備能が低下する
女性が生まれたときに持つ卵母細胞の数は限られており、年齢と共にこの数は自然と減少します。
特に37歳を過ぎると、卵巣予備能の低下が顕著です。
卵巣予備能の指標として利用されるAMHは、血液検査によって測定され、将来の妊娠の可能性や不妊治療の必要性についての判断材料となります。
ホルモンのレベルを知ることで、妊娠に最適なタイミングや治療の進め方を決定するのに役立ちます。
既存症リスクが増加する
加齢により高血圧や糖尿病、肥満や子宮筋腫などの健康問題のリスクは高まります。
これらの健康状態は、不妊の原因となることや、妊娠を維持することを困難にする可能性があります。
特に妊娠期間中にこれらの病状を発症すると、母体と胎児に重大な影響を及ぼす恐れがあるため注意が必要です。
妊娠を希望する場合は、日々の健康管理を心がけましょう。
卵子が老化する
日本生殖医学会によると、患者本人の卵子を用いた不妊治療の成功率は年齢と共に落ちる一方、若い女性から提供された卵子を使用した場合、年齢を重ねても成功率に大きな変化はみられませんでした。
これにより、卵子の質の低下が不妊の一因であることが明らかになります。
卵子の老化は、染色体異常の確率を上昇させることもあり、これが胎児の発達障害や流産のリスクを高めることにつながります。
精子の質が低下する
長らく女性の年齢が不妊に及ぼす影響が強調されてきましたが、男性の年齢もまた妊娠の確率が下がる要因の1つです。
男性の年齢が上がるにつれて、精子のDNA損傷が増加することが明らかになっています。
特に35歳を境に、精子の質に影響が出始めるとされています。
精子は新しく生成されるため、年齢による影響が少ないと考えがちです。
しかし、実際には質の低下がみられるため、男性も年を取るにつれて不妊治療を検討しましょう。
不妊治療の保険適応の対象年齢は43歳!
2022年4月以降、不妊治療に保険適用が拡大され、以前は保険対象外だった体外受精などの治療も保険適用の範囲内になりました。
これまでは不妊に関する検査や一部の治療のみが保険適用であり、その他の不妊治療には「特定不妊治療費助成事業」が用いられていました。
新たな改訂により、医療機関での自己負担が原則として3割に軽減されます。
ただし、保険適用されるためには治療方法や年齢、治療回数に一定の条件があります。
保険適応対象となる年齢と回数
不妊治療における保険適応の上限年齢は、治療を開始する時点での女性の年齢が43歳未満であることが条件です。
保険適用される治療回数は以下のとおりです。
年齢 | 治療回数上限 |
---|---|
40歳未満 | 子ども1人あたり最大6回 |
40歳から43歳未満 | 子ども1人あたり最大3回 |
この年齢制限の背景には、体外受精の成功率が年齢と共に低下し、43歳を超えると成功率が5%以下になるという事実があります。
したがって、子どもを望む場合は、可能な限り早期に治療を開始しましょう。
保険適用の対象となる治療内容
不妊治療において保険適応の対象となる治療は、以下の3つです。
- 人工授精
- 体外受精
- 顕微授精
それぞれの治療内容を詳しく解説します。
人工授精
人工授精は、女性の排卵タイミングを見計らって、パートナーの精子を子宮内に直接注入する治療法です。
自然な妊娠とは異なり、精子を腟ではなく子宮内へ直接届けることによって、精子と卵子の出会う機会を増やします。
精子を注入した後の妊娠の過程は、自然妊娠時と同様です。
これにより、人工授精は自然妊娠に最も近い形の治療とされています。
体外受精
体外受精は卵子と精子を体の外で結合させ、受精卵を女性の子宮内に移植し、着床を促す治療手段です。
この方法は以下の悩みを持つ方に勧められる治療法です。
- 人工授精で妊娠に至らなかった場合
- 卵管に問題がある場合
- 男性側に不妊の原因がある場合
- 原因不明の不妊症で悩んでいる場合
健康状況や年齢、希望する子どもの数に応じて、医師と相談しながら体外受精の治療を進めるかを判断しましょう。
顕微授精
顕微授精は、選択された健康な単一の精子を特殊な針で直接卵子に注入する高度な不妊治療法です。
従来の体外受精と異なり、卵子に精子を直接導入することで受精の確率を高めることができます。
顕微授精は男性の不妊が原因である場合や、従来の体外受精で成果が得られなかったカップルに推奨されます。
ただし、精子を注入しても全ての卵子が受精するわけではない点に注意が必要です。
年齢を理由に諦めたくない!不妊治療を成功率を上げる5つの方法
不妊治療は年齢が上がるごとに成功率が低下しますが、年齢を理由に子どもをあきらめたくないという方が大半です。
そのため、不妊治療の成功率を上げる方法として、以下の5つを紹介します。
- 健康を意識する
- 適切な睡眠を心がける
- ストレスをためない
- 適切な不妊治療を受ける
- 卵子や精子を冷凍保存をする
パートナーと協力しながら、不妊治療を進めていきましょう。
健康を意識する
年齢が上がるにつれ、不妊治療の成功率には影響が出ることがありますが、健康的な生活を心がけることで、影響を最小限に抑えることが可能です。
健康的な生活をするために、以下を意識してみましょう。
- バランスの取れた食生活
- 適度な運動の継続
- 禁煙
- アルコールの摂取を控える
栄養豊富な食事は、卵子や精子の質を高めるだけでなく、ホルモンバランスを整える効果も期待できます。
また、定期的な運動はストレスを減少させ、体重管理にも役立ちます。
年齢に関わらず、これらの健康習慣を取り入れることで、不妊治療の成功率を高めましょう。
適切な睡眠を心がける
睡眠不足はホルモンバランスの乱れを引き起こし、妊娠の可能性を低下させる原因になります。
毎晩同じ時刻に就寝する習慣をつけ、7〜8時間の質の高い睡眠を確保することが重要です。
適切な睡眠は、ストレス軽減にも役立ちます。
毎日の生活の中で質の良い睡眠を優先することは、不妊治療を成功に導いてくれるでしょう。
ストレスをためない
ストレスは、ホルモンバランスに影響を与え、妊娠の可能性を下げることが知られています。
ストレス軽減のためには、自分にあったリラックス法を見つけることが大切です。
リラックス法として、以下を試してみましょう。
- ストレッチやヨガで身体の緊張をほぐす
- ぬるま湯で入浴する
- 音楽を聴く
- 自然の中を歩く
- 趣味や興味のある活動に時間を費やす
これらのリラックス法を日常生活に取り入れることで、不妊治療のプレッシャーやストレスから距離を置きましょう。
適切な不妊治療を受ける
不妊治療の選択肢は人工授精や体外受精、顕微授精などさまざまな方法があります。
治療方法によって期待できる妊娠率は変わってくるため、自分たちの状況に最適な治療法を選ぶことが大切です。
治療法を選ぶ際は専門の医師に相談し、個々の条件に合った治療方針を決定することが、妊娠への確率を向上させます。
特に時間に制約がある場合は、積極的に治療方法をステップアップすることも重要です。
自分の年齢や健康状態、これまでの治療経過を踏まえ、適切なタイミングで最良の治療を選択しましょう。
卵子や精子を冷凍保存をする
卵子や精子の冷凍保存は、将来的に妊娠を希望するものの、現時点ではタイミングが合わない人におすすめの選択肢です。
超低温の液体窒素(−196℃)を用いることで、生殖細胞を長期にわたり保存することが可能になります。
この方法には費用が伴いますが、質の良い卵子や精子を将来のために保管しておくことで、年齢が上がっても妊娠のチャンスを保持する有効な手段です。
特に不妊治療を考えているが、すぐに治療を開始する予定がない場合や、医療的な理由で生殖能力が低下する可能性がある人にとって、この選択肢は大きな希望です。
不妊治療が保険対象になるメリット
不妊治療が保険対象になるメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 不妊治療の内容が標準化された
- 経済的負担が軽減された
- 不妊治療の社会的理解が進む
子どもを望むカップルにとって、どのような希望が増えたのかを確認してみましょう。
不妊治療の内容が標準化された
不妊治療が保険診療の範囲内に含まれるようになったメリットの1つは、治療内容の標準化が進んだことです。
治療内容の標準化は、治療法や進め方を統一することを意味します。
これまで個々の患者に合わせた特別な治療を行うことが多かった不妊治療の分野でも、ある程度のガイドラインが確立されました。
年齢や治療回数には制限が設けられていますが、治療法が明確になったことで、多くの人が治療を受けやすくなったといえます。
経済的負担が軽減された
以前は不妊治療にかかる費用は全て自己負担であり、高額な治療費が不妊治療への大きな障壁となっていました。
特に、体外受精や顕微授精といった高度な治療は、その費用の高さから踏み出せない人も多かったはずです。
保険適用が拡大された現在、治療費の負担が大幅に軽減され、より多くの人が治療を受けることが可能になりました。
これにより、不妊治療を受ける際の経済的なハードルが下がり、多くのカップルが新たな治療の機会を得ることができます。
不妊治療の社会的理解が進む
不妊治療が保険診療に含まれるようになったことは、「不妊は医療の対象である」という認識が社会に広がる大きな一歩です。
これまで不妊治療を必要とする人は、職場での理解を得ることが難しく、治療のために仕事を休むことに対する罪悪感を感じている場合も少なくありませんでした。
保険適用の拡大により、不妊治療に対する社会全体の理解が深まり、治療を受けやすい環境が整います。
不妊治療が保険対象になる注意点
不妊治療が保険対象になったことは、良いことだけではありません。
ここでは、保険対象になったデメリットとして、以下の3つを紹介します。
- 負担額が増える場合がある
- 不妊治療の内容に格差が生まれる
- 不妊治療法の研究が進みにくくなる
保険対象になったことで、どのような変化があるのかを確認してみましょう。
負担額が増える場合がある
不妊治療の保険適用が一般的には経済的な負担を軽減させる一方で、保険適用外の治療法を選択する場合、費用の負担が増える可能性があります。

日本では、保険診療と非保険診療の混合診療が原則として認められていません。
そのため、一部の治療で非保険診療を選択した場合、本来保険適用の範囲である治療費まで全額自己負担となる可能性があります。
また、以前は特定の助成制度によって一部の治療費が補填されるケースもありました。しかし、その制度の適用外となると、結果として全体の経済的負担が増加する可能性があります。
不妊治療の内容に格差が生まれる
保険診療が導入されると、保険審査の申請作業が必要となり、特に小規模なクリニックでは負担が増える可能性があります。
このため、全ての医療機関で先進的な不妊治療が提供されるわけではなく、治療を受けられる場所に格差が生じる可能性があります。
また、保険適用外の治療については全額自己負担となり、経済的な余裕がある人だけが高度な治療を受けられるという状況が発生するかもしれません。
不妊治療法の研究が進みにくくなる
不妊治療の分野では、これまで自由診療の枠組みのもとで、個別のクリニックが開発した先端技術が生殖医療を発展させてきました。
自由診療であるがゆえに、新しい治療法を迅速に導入し、実践的な研究を推進することができたのです。
しかし、治療が保険診療の範囲に入ることで治療法が標準化され、その結果として新しい治療法の開発や導入に時間がかかる可能性があります。
不妊治療に関するよくある質問
不妊治療は何歳でやめるべきですか?
年齢が上がるとともに、妊娠の可能性は自然に低下します。
特に40代における自然妊娠の確率は約1〜5%です。
妊娠の確率だけではなく、高齢妊娠が母体と胎児に与える影響も深刻なため、45歳を超えた場合は不妊治療の継続を検討しましょう。
不妊治療の平均年齢は何歳ですか?
ロート製薬による『妊活白書2019』の調査結果から、妊活を開始する平均年齢は32.1歳であることが明らかになりました。
これは2018年の調査と比較して若干の早期化を示しています。
さらに、20代後半で妊活を開始する割合が増加しており、この年代の3人に1人が妊活を行っているとの回答がありました。
不妊治療は43歳までしか受けられないのはなぜですか?
不妊治療に「43歳未満」の年齢制限が設けられている主な理由は、年齢が高くなるにつれて妊娠の確率が低下するからです。
特に43歳を超えると、妊娠へのリスクが高まり、成功率が著しく低下することが知られています。
さらに、保険適用される不妊治療の種類や範囲は年齢によって変わるため、早期に治療を開始することが推奨されます。
妊娠しにくくなる年齢は何歳ですか?
妊娠しにくくなる年齢は、一般的に40代前半からです。
45歳から50歳の間に多くの女性が閉経を迎え、排卵と生理が停止するため、自然な妊娠が不可能になります。
しかし、実際には閉経直前まで妊娠の可能性があるわけではなく、年齢が上がるにつれて妊娠の確率は急速に減少します。
年齢を理由に不妊治療を諦めないためにも健康を意識しよう!
妊娠の成功率は年齢と共に変わりますが、年齢が高いからといって希望は決して失われません。
不妊の疑いを抱えたときは、早期の対処が重要です。
治療開始のタイミングが大切とされていますが、進化した医療技術により、年を重ねても妊娠が叶う可能性を持っていることを忘れないでください。
年齢に関わらず、治療に前向きに取り組むことで、成功のチャンスを高めることが可能です。
睡眠や健康を意識しながら、不妊治療を進めていきましょう。